AIが仕事を奪うって本当?
AIの発達により、人間の仕事がなくなるようなことが言われています。筆者も心配した一人です。なくなる仕事とは何なのか、本当になくなるのか、それはいつなのか、漠然としたまま心配している人が多いと思います。
結論から言います。
仕事によってはあと10年で人からAIに置き換わります。ただし、なくなりはしません。AIの行動をチェックする人が必要だからです。また、AIや自動化の発達によって新たに生まれる仕事がありますから、全体的な雇用は変わらないか、増える可能性もあります。詳しく見ていきましょう。
AIに置き換わる仕事
昨今の研究で以下のようなものがAIに奪われる仕事(なくなる仕事)だと言われるようになりました。なぜ挙げられているのか主な理由と寿命を筆者が想像し、ざっくり振り分けてみました。
決められた作業を自動化できる仕事(寿命:10年)
- 事務員
- 駅務員
- 各種オペレータ
- スーパー店員
- 調理員
- 倉庫係員
- 清掃員
- ホテル客室係
- 塗装工
- 素材成形工
- 建設作業員
- 食品製造工
- 電子部品製造工
対話型AIや遠隔保守などで可能となる仕事(寿命:10年)
- 受付係
- 窓口係マンション
- ビル管理人
- 各種オペレータ
AIの画像認識や異常検知などで可能となる仕事(寿命15年)
- 警備員
- 会計監査係員
- 検収・検品係員
- ビル施設管理技術者
- 道路パトロール隊員
- 電気通信技術者
- 電子計算機保守員
- 電子部品生産オペレータ
- 測量士
AIの画像認識や自動運転、ドローンなどで可能となる仕事(寿命15年)
- 道路パトロール隊員
- タクシー運転者
- 路線バス運転者
- 宅配便配達員
- バイク便配達員
- 新聞配達員
- 電車運転士
※ ただし、どの仕事も人間の補助が必要な部分はありますし、複数のAI技術を組み合わせるものもあります。
機械的な作業は機械に自動化され、人間の判断が必要なものはAIが代行するといった形ですね。ただしどんな仕事もあまりスムーズにはいかず、事前にその仕事をよく研究したり、導入の段階で調整することが多くあります。
ちなみにAIと自動化という言葉は少し違います。詳しくはこちらを -> AIと自動化の違い
本当にこれらの仕事は奪われるのでしょうか。
実際にAIを開発している現場からお伝えします・・・
既に色々な仕事でAIが試されていますが、現在のAIは間違いを2割ぐらい起こしますし、特定のことしかできません(詳しくは ー> 現在のAIの弱点)。
しかししだいに、学習の仕方によってより精度が上がり、工夫しだいで仕事の幅が広がることが分かってきました。AI技術を向上させながら徐々にAIに置き換えればよい、と段階的な導入が考え始められています。
こうして試験運用を終えたところから、人事的な調整をしながら徐々にAIに置き換えます。これが5年ぐらいでしょう。上記の仕事の中にも難易度や優先度がありますから、自動化のニーズの強い仕事から投資され、だいたいの業種に広まるのは10年ぐらいではないでしょうか。
1つの仕事のAI化(自動化)で5年、多くの業種に広まるのが10年。つまり上記の仕事全体が置き換わるのは最大15年程度ではないかと推測できます。
(って開発しているほうは大変なんですけどね)
ただしその職業がなくなりはしません。AIは人間と同じで100%正しく動くわけではないため、行動をチェックし修正する人が必要だからです。また、仕事によっては全てをこなすことが難しいため、人がAIを補助する、AIが人を補助するような形も多いと思います。
「俺の仕事は職人技で機械には真似できん」と聞こえてくることもあります。仕事によっては真似できないかもしれません。しかし繊細な癖を得意とするAIもありますので、生き残るかどうかは仕事しだいだと思います。
AIには難しい仕事
さて、逆にAIには代行が難しいと言われている仕事があります。こちらもなぜ挙げられているのか主な理由を筆者が想像し、振り分けてみました。
芸術力・創作力が必要な仕事
- ディレクター・プロデューサー
- コーディネーター
- カメラマン
- デザイナー
- クリエーター
- アーティスト
- スタイリスト
- ツアーコンダクター
- ライター・記者
- 編集者
- 演出家
- 美術家
- 商品開発部員
- リサーチャー
- ミュージシャン
- 料理研究家
感情が伴う対人応対や思考が必要な仕事
- カウンセラー
- コンサルタント
- エコノミスト
- 社会学研究者
- 人類学者
- 中小企業診断士
- 評論家
- レストラン支配人
- アナウンサー
- バスガイド
人の存在自体や五感が求められる仕事
- テレビタレント
- 俳優
- 声楽家
- 演奏家
- バーテンダー
- 旅行会社カウンター係
- アロマセラピスト
- ソムリエ
生命を扱う、または相手の感情を考慮する仕事
- 医師・療法士
- カウンセラー
- 講師
- 教師・保育士
- インストラクター
- 美容師
- 動物訓練士
こうして見ると、人間にしかできない仕事(AIができないこと)というものはどんなものなのか勉強させられますね。芸術的な思考が必要なものや、責任をもって生命を預かることの他に、人がいることによって成り立つ仕事(例えば人が演じているから楽しい、人から教わるから安心できる)というようなものがあることを改めて認識させられます。
ただし上記の仕事にもAIが入り込んでいる事例があります。病院ではレントゲン写真の判定にAIを試験導入していますし、絵画の世界では人間に思いつかない芸術的な絵をAIが書いた事例があります。どんな仕事でもAIを補助的に使い始めるのかもしれません。
AIにより新しく生まれる仕事
AIが普及することにより増える仕事もあります。公開されているものは少し難しいので、筆者の言葉に置き換えました。
- 各職業でAI化した後の運用者(作業補完、チェック、アップデート、緊急対応等)
- AI活用コーディネータ、連携コーディネータ
- データ分析結果評価者
- 契約・保険・法律に従ったAI行動判定係、ガバナンス担当
- AI行動・成長ルールに従った取り締まり
- AI都市化の本格化に伴う多業種(建設・IT・乗物・教育・デザイン・人的配備)での連携・運用
- 各種遠隔サービスの現場支援者(医療、商品サポート)
- 増えた余暇の過ごし方に関するコーディネータ、訪問インストラクタ
※ AI都市化というのはトヨタが開発の先陣をきっているAI実証都市(あらゆるものを連携し自動化した街作り)のことです。
Webデザイナーという仕事がインターネット普及前には想像されていなかったように、AI発達後は上記以外にも思いつかないことがたくさん出てくると思います。
いかがでしたか?
AIが普及すると、仕事がなくなるというよりも変化してくると言ったほうがいいかもしれません。新聞で「DX(デジタル化による変革)の市場規模は10年後に10倍」と言われていますし、政府もデジタル庁を新設します。本格化すればこのままでは人材も不足してくるでしょう。注意点があるとすれば、常に頭を柔らかくしておくことです。これができる人ほど、仕事の心配はありません。
こんなAIにも弱点があります。詳しくはこちら -> AIの弱点 ~開発者が告白~